作法以上に大事なこと2つ
作法以上に大事なこととは?
「訪問先で抹茶を出されたけど、飲み方の作法がわからなくて焦ったから、次回に備えて作法を教えて!」
「茶道に興味があるけど、作法が全くわからないから始めるのに勇気がいる…」
という声を聞くと、茶道に興味を持ってくれてうれしく感じると同時に、声を大にして主張したくなることが1つあるんです。
それは、
「作法なんかより、もっと大事なことがある!!」
ということです。
「え、茶道ってお茶の作法を学ぶものじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、
茶道において、作法は手段であって目的ではありません。
茶道で一番大事な目的は、「和」。
和とか言うと気取って聞こえますが、つまりは「お茶を通してその場にいる人たちが仲良くすること」が目的です。
※茶道は禅宗との結びつきが強いので、修行的な目的で茶道をする人もいますが、話がややこしくなるので、ここでは修行は省きます。
今回は「茶道の目的=和」という考え方に基づいて、
1、茶道具=赤ちゃんだと思って扱う
2、作法の違いを指摘するのはむしろ無作法
という、作法以上に注意すべきこと2つを熱く語ります!
1、茶道具=赤ちゃんだと思って扱う
まずは、茶道具を大事に扱ってほしい。
自分が出産・育児を経験して気づいたのですが、茶道具の扱い方って、赤ちゃんの扱い方と同じなんです。
自分の子であれ、他の人の子であれ、赤ちゃんに対して
・汚れた手でベタベタ触る
・片手だけで掴んで持ち上げる
・音を立てる勢いでどこかへ下ろす・落とす・ぶつける・引きずる
・ひっくり返したり捻ったりする
なんてこと絶対にしないですよね?(そうであってほしい)
基本的に両手で抱えたり、そっとベッドに下ろしたり、「腕時計つけたまま抱っこすると痛がりそうだから外そう」など、色々気にしたりすると思います。
自分の赤ちゃんを乱暴に扱われたら、言葉や態度に出さないとしても、「もうこの人にうちの子を触ってほしくない」という気持ちになりますよね?
茶道具も同じです。
色々な思い出が詰まっていて、持ち主にとっては代わりのない、世界にたった1つの大事な存在。子どもと同レベルなんです。いや、大げさじゃなく。
実際茶道をする人が、茶事・茶会などのイベントに誰を招待するか決める時も、「お道具を大事に扱ってくれるか否か」は重要な判断材料になりますし、
お茶の世界では茶道具は「道具」じゃなくて「お道具」と呼ぶんですが、そういうところからも、いかに大事にしているかがうかがえますよね。
だからこそ、抹茶を出されたら、または茶道を習いに行くなら、具体的には以下のようにお道具を扱ってほしい。
・水や油汚れのついた手で触らない
(お道具を傷めるから。物によっては水や油汚れが付くと致命的な物もあります。事前に手を洗うかおしぼりで拭くなどしてからお道具を触りましょう。)
・音を立てないようそっと置く。他の物とぶつけない、引きずらない
(指輪や腕時計、ネックレスなど、茶道具にぶつけて傷つけてしまう可能性がある固い装飾品はできるだけ外してから触りましょう。結婚指輪はただの装飾品ではないので、必ずしも外さなくても大丈夫ですが、指輪の上でお茶碗をごりごりこすられるとつらいです。)
・無闇にひっくり返したり捻ったりしない。高いところで持つ時は両手でしっかり持つ
(陶器に限らず木製のお道具であっても、落ちたりこすれたりすると、模様が剥げたり傷がついたりします。模様のついている部分は極力手でも口でも触らないようにしましょう。)
日頃言いたくても言いにくいから、ここぞとばかりに細かく書きましたが、
要するに「汚さない・傷つけない」ということです。
これさえ気をつけてくれていれば、お客さんがお茶碗を右に回そうが左に回そうが、45度だろうが90度だろうが、ぶっちゃけどうでもいいです。(抹茶の飲み方の記事でこの辺りはもう少し細かく説明します)
あとは…もしここまでのお道具の扱いが問題なくできて余裕がありそうならですが…
お茶碗などのお道具の、見た目や感触など、何でもいいから褒めてあげてください。笑
最初に茶道具=赤ちゃんという説を唱えましたが、
自分の子を褒められたら内心満更でもないように、お道具も褒められるとうれしいんです。
しかもお道具はいくつか持っている中から、その日のため、そのお客さんのためにセンスや思いやりなどをフル動員して選んだものなので、その意図とか汲み取ってくれたらもう茶人冥利に尽きます。
が、そんな難しいことを考えなくても、
「きれいな色のお茶碗だね」とか
「ちょうど今の季節の花の模様だね」とか、
「おもしろい形してるね、こんなのもあるんだ」とか、
ちょっとでも褒めてもらえたら、その日はそれで幸せになれるのが、茶人というものです。
はい。少し暴走しかけましたが、
とにかく赤ちゃんのように、お道具を扱ってくださいというのがまず1つ目です。
2、作法の違いを指摘するのはむしろ無作法
これは少し作法をかじった人に1番ありがちな失敗なのですが、
他の人が先に書いたような乱暴なやり方でお道具を触っているのでない限り、自分の知っている作法を他の人にまで押し付けるのはよくありません。
これには2つの理由があります。
①流派の数だけ作法があり、正解はない。
作法というのは、お茶の飲み方1つ取っても、流派によってかなり違います。
ちょっと検索してみれば、様々な作法がヒットして、逆に混乱してしまうくらいでしょう。
実際にうちの母は昔、表千家で茶道を習ったことがあるそうですが、裏千家の私とやり方が違うため、「そこって右じゃなかった?」というようなことをよく聞いてきます。
「自分の流派とは違うんだ!おもしろい~」という趣旨で聞くのはアリですが、
「え、それ間違いじゃない?」というニュアンスで聞くのは完全にアウトです。
というのも、流派の違いというのは
「俺的にもっとこうした方が美しいと思う」「私はこうした方がいいおもてなしだと思う」
そういう方向性の違いから、古くより色々な人が色々な流派を作って分かれていったものなので、つまり全部正解なんです。
だから、作法の違いを指摘して自分のやり方を正しいとするような言動は、むしろ自分の無知を晒してしまうので、やめておきましょう。
特に流派に所属していない人の場合は、最初に知ったやり方を実践すれば大丈夫ですし、
後から別の作法の方がやりやすい・かっこいい・理にかなうと思えば、そちらに変えてももちろんOKです。
②主役は作法じゃない
この記事の冒頭でも書きましたが、茶道で一番大事な目的は、「和」であり、作法ではありません。
つまり、知人を家に招いて抹茶を出した場合も、目的は「いかに抹茶を上手に飲むか」ではなく「お客さんと楽しい時間を過ごすこと」なのです。
そんな中、「あなた、お茶碗は時計回りに回すのよ。今、反対に回してたでしょ」など、どうでもいいことで楽しい話題が度々遮られたりしたら、興ざめですよね。
たとえ同じ流派同士で間違いに気づいたのだとしても、相手に恥をかかせてしまっては、楽しい時間になりません。
そういうわけで、茶道のお稽古中でない限り、招いた側と招かれた側でも、お客さん同士であっても、その場の和を乱すような発言は控えましょう。
作法以上に大事なことのまとめ
お互いに楽しい時間を過ごすために、人も物も大事に扱う!(=和)
さて、茶道の本質に迫る話だったので、つい気合が入って長文になってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。
「茶道って小難しい、堅苦しい」と思われることが多いですが、実際のところは「みんなが楽しくやるためにちょっとルールがある」という程度です。そういう点ではスポーツと同じですね。
本質を知っていただいたところで、今後は抹茶の飲み方などの簡単な作法や、私が個人的に「茶道のこんなところが好き!!」と感じるポイントなどを紹介していきますので、よかったらそちらも読んでみてください。